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小学校5年生の終わりまでの何年間か、いつから始まったのか思い出せないが、たしかに毎週火曜日と木曜日にスイミングスクールに通っていた子どもの頃のぼくは、すっかり泳ぎが得意になって、「かつてあなたは魚だったよ」と言われていい気になっていた。子どもながらに、その主張には説得力があると感じていた。魚の鰭が進化して人間の手ができたのだと図鑑に書いてあったし、手は水を掻くのにあまりに適していたため、つい最近まで自分は魚だったと簡単に考えることができた。鰭が手のように開いたり閉じたりするさまを図鑑と見比べているあいだに食卓の焼き魚は冷めて、母親によってすっかり骨が取り除かれてしまうので、ぼくは大学生になるまでひとりで焼き魚を食べることができなかった。

また別の日には「海坊主みたい」と言われていい気になった。プールでは向かうところ敵なしだった。事実、流れるプールでは流れに逆らって泳ぐことができた。手を使わずに泳いだり、足を使わずに泳いだりして、より海坊主っぽい気分になったりした。いま、どこまでできるかわからない。