2015-01-01から1年間の記事一覧

The Best Offer

ビリーの描いた《ポートレイト・オブ・クレア》は一度はやり過ごされ、ヴァージルは目の前のクレアを連れ出すcollectことに注力する。クレアと愛しあうようになったヴァージルは、やがて彼女に自分のコレクションをさらけ出す。私の前にこんなに女性がいたの…

プラネタリウム

わたしたちが魚の目で泳いでいるとき、南極は白夜と極夜を往き来している。凍てつく大陸の足下には湖が広がっていて、見上げると沈んでいく体を感覚する。水面が揺らめき、ぽつぽつと星々が瞬く。波はだんだんと薄らいでいく、無数の点滅が繰り返されている…

夢を見た。彼女は隣で寝ているのに彼女が「ただいま」と言ってバイトから帰ってきた。ぼくは帰ってきたほうの彼女を追い払う。夢から覚めても彼女は隣で寝ている。ほとんどの場合このように彼女は隣で寝ているので、ぼくは隣で寝ている彼女を信じて帰ってき…

「箸の持ち方って誰に習った?」ぼくは彼女に訊いてみたことがあった。 「おかあさんか保育園の先生だと思う」と彼女は言った。ぼくは誰に習ったんだろう。もし母親に習っていたのだとすると、息子がおかしな箸の持ち方で何年間も目の前で食事をしているのに…

小学校5年生の終わりまでの何年間か、いつから始まったのか思い出せないが、たしかに毎週火曜日と木曜日にスイミングスクールに通っていた子どもの頃のぼくは、すっかり泳ぎが得意になって、「かつてあなたは魚だったよ」と言われていい気になっていた。子ど…